猫額洞の日々

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2009年 06月 05日

戸板康二「松風の記憶」読了

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 おっとりしたミステリだった。しかし、歌舞伎役者・中村雅楽の
示唆を受けて、親しい刑事が容疑者宅を捜索するシーンは、捜査
令状を取った様子もなく、個人プレイに走り過ぎではないか。

 そういった細かい(?)点はともかく、少女から大人になろうとする
時期の若い女性の感情や行動に注がれる、作者や中村雅楽のやさしい
眼差し__どの登場人物に対しても、冷静に穏やかな視線で見つめる
__は、後味の良さを残す。
 物足りない、という意見もあろうが、そんな方のために、日本の
社会派ミステリがあるのだろう。読んだことがないので断言はしない。

 異母兄弟姉妹ばかり出てくるし、他人のそら似や双生児と見まがう
兄弟も出てくるのは、舞台が歌舞伎役者の世界だからこそ、可能な
設定であろう。
 歌舞伎の知識がゼロなので、登場人物たちが演じる歌舞伎や舞踊の
演目と、ミステリの流れとの絡みが、呼応し合っているのはなんとなく
解るが、どうも豚に真珠であるのが残念だ。無知は不利である。
 けれども、それなりに楽しめる工夫がこらされているので、ご心配無用。

 中村雅楽は、新劇にも造詣が深い。
< 「その子が口頭試問の時に、マーシャをやってみたいと言ったんだ
 そうです」
  「"三人姉妹(きょうだい)"のかね」さすがに雅楽は、マーシャを知って
 いる。ただし彼は、三人シマイとはいわずに、三人キョウダイと発音した。
 むかしは、そういったものなのである。>(p154)

   (講談社文庫 83初 J)
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by byogakudo | 2009-06-05 14:35 | 読書ノート | Comments(1)
Commented by aosima0714 at 2009-06-05 14:40
訪問です。

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