猫額洞の日々

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2009年 06月 08日

ジョン・ウインダム「呪われた村」読了

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 「呪われた村」(ジョン・ウインダム HPB 59初)は「光る眼」の原作
だと思うけれど、地味で皮肉でヒューマーある筆致がすばらしい。
 映画にするには宇宙人の侵略を表にしないと絵にならないが、本は
侵略されてしまって、さあ、この事態とどうつき合って行くか、という
問題をじっくり考えることがメインである。

 先日いらしたお客さまが、アメリカのミステリやSFにどうも馴染めない、
「本」を読みたいのに、アクション・シーンばっかりでつまらない、
と仰る。アメリカ作家のサーヴィス精神が、読書好きを却って遠ざける
のだろう。この方にぴったりなのが「呪われた村」やチェスタトン等の
イギリス作家ではないかしら。

 「呪われた村」の主人公(語り手は、一時的に村に住んだ作家だが)が、
すてき。元領主邸に住む老文人である。身も蓋もない単刀直入な発言・
思考様式を排し、いささか回りくどくはあっても、何事も疎かにしない
観察態度・思考形態を貫く。

 生まれてしまった超人類的異星人の子どもたちと、ミドウィッチ村の
人々や全人類は、いかに戦争状態を避けて共存できるかと観察・思考を
続けるストーリーである。アメリカ作家の小説なら、すぐに村人による
リンチ場面になりそうだ(ここでもなりかけるが、異星人の子どもに
反撃される)。

 イギリス的な現実対処能力の話がある。話者は別人であるが、子ども・
超人との会話で、
< 「[略]とにかく、ここは文明国だし、妥協点を見出す能力では名の
  知れた国なのだからね。ちょつと見ただけでも、意見の一致する点が
  全然ないとは思えないのだ。歴史を振りかえつてみても、多数より
  少数にいつも寛容だつたからな」(p218下段)

 ミス・マープルのセント・メアリ・ミード村にも似た(子どもたちの
意志で村人たちが村外に出ることができなくなる場面では、
「プリズナー」も思い出した)ミドウィッチ村(Midwich)は、
middle-witchであろうか。
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by byogakudo | 2009-06-08 13:31 | 読書ノート | Comments(2)
Commented by nemurineko at 2012-11-11 08:38 x
初めまして、昨日『呪われた村』を読了しました。
侵略ものとしてはアプローチがすばらしいですね、直接的な侵略方法ではないし
作品自体地味目ではあるけど作品の本質は深いなと感じました。
彼ら子供達に村の人たちが確かな教育と愛情を与えていたらどうなっていたのかも
知りたいところです。
Commented by byogakudo at 2012-11-17 17:21
こんにちは。お返事が遅れまして失礼いたしました。
非人間的で優秀な子どもたちに、思いやりという成熟した感情は生まれ得るか。かなり難しいかなと、わたしは思うのですが。


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