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洗濯機がないので、週に一度、店近くのコインランドリーを
使う。
乾燥機にかける時間になったので行くと、先客がある。老夫人が
白足袋を落っことしたりしながら、乾燥機に洗濯物を入れている。
目が合うと話しかけられた。
もちろん初対面である。わたしは知らない老人から、わりと話し
かけられる。
「乾燥機を使うのを憶えてからよく使うようになったんですよ。
いやね、夕べ10年前に作った死に装束を出してみたら、きちんと
ポリ袋に入れてしまっておいたのに黄ばんじゃってて、一晩さらし粉に
つけて真っ白にしたんですけど、このお天気でしょ、なかなか乾かなくて」
そこから、10年前に献体を申し出たことや、去年90歳のお姉さまを
見送ったことなどの話になる。
「あたしも早くお迎えが来てもらいたいんですけどね」
「そんなにお急ぎにならなくとも、もう少しご滞在されていいん
じゃないですか?」
「だって、もう89なんですよ、くたびれちゃってねえ」
「ね、200円で大丈夫ですよね?」
「厚地のものがなければ大丈夫ですけれど」
「ネルのお腰以外は白木綿だから乾くはね」
明るい会話の弾む昨夕であった。