2009年 09月 07日

吉行淳之介「悩ましき土地」読了

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 写真は、谷中・経王寺。扉の穴は、お寺に逃げ込んだ彰義隊へ
放たれた弾痕。



 昨夜は、吉行淳之介「悩ましき土地」(講談社文芸文庫 95初 J)を読む。
引き算で書く作家だ。

 「歯」という700~800字の掌編で、うっかり読み間違いするところだった。
美容院のマダムと話者である「わたし」が共通に知っている、ある醜女・圭子の
うわさ話をするだけのストーリーだが、「わたし」を最初、男だと思ってしまった。

 書かれた頃、1950~60年代なら、男は床屋に行き、美容院には行かなかった
けれど、70年代以降は男も美容院に行って不思議でない時代が続いているのと、
「わたし」の感慨が男の視線であることが、読み間違いの理由だろう。

 醜女は結婚しない言い訳として、ハンサムじゃなければ厭と言っているが、
圭子の見合い相手の写真をマダムから見せられる。

< 写真を見た。端麗、といってもよい青年の顔がそこにある。わたしはすでに
 結婚して、ともかく幸福である。そういう女の、余裕と残酷さをもって、
青年の
 顔の横に圭子の顔を置いてみた。>(p100)

 ボールドした部分、結婚して幸福な女は普通、そんなことを意識しないのでは
ないだろうか。自分の余裕や残酷さに関して、女は無自覚であるのが、一般的
だと思う。男である作者の視線であろうが、それを言うと、この掌編の切れ味も
何もなくなり、ストーリーが成立しない。
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by byogakudo | 2009-09-07 15:20 | 読書ノート | Comments(0)


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