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猫額洞の日々

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2009年 10月 04日

シムノン「メグレと匿名の密告者」読了

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 メグレ・シリーズも終りの頃(1971年)に書かれたもの。
誰かの後書きで、シムノンは生涯に270冊の小説を書いたとか
記されていたが、河出のシリーズ・裏表紙の作者紹介には400冊
以上と、書かれている。いずれにしても多作である。
 やや同工異曲が目立っても、いいじゃないか。読者は謎解きに
挑戦するのではなく、メグレ夫妻や登場人物の生きている様子、
街の空気を読みたくって読んでいる。

 「メグレと匿名の密告者」は、メグレ夫妻と町医者のパルドン
夫妻との夕食の話で始まる。
 今回はメグレ宅での食事なので、メグレ夫人は、ほろほろ鳥の
パイ巻きに腕をふるう。<男たちのほうはアルザスのりんぼく酒か
木苺のリキュールなどをのみながら>夕食を待つ。
 食事中はとっておきの葡萄酒、さらに食後も<それから、彼らは
一体何杯のりんぼく酒を飲んだのだろうか?>(p7)

 その夜中の二時に、殺人事件発生で起されたメグレ氏は、当然
気分がすぐれない。朝方戻って昼前に目を覚ましても依然、不調
である。メグレ夫人から軽食を勧められても、あまり食欲がない。
 メグレ夫人が、ほろほろ鳥のせいで消化不良を起しているのかと
心配する。
< 「そいつは消化したんだが、パルドンと少しりんぼく酒を
 飲みすぎたようだ......それに、葡萄酒もあったし......」(p37)

 こういう箇所も楽しんでのメグレ警視シリーズだ。
     (メグレ警視シリーズ32 河出書房新社 78初 帯 VJ欠)
 

by byogakudo | 2009-10-04 14:56 | 読書ノート | Comments(0)


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