2009年 11月 05日

宮ノ川顕「化身」読了

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 お師匠さんご推薦の、第16回日本ホラー小説大賞受賞作である。
 「文章がしっかりしてる。期待できるのは、恒川光太郎とこの人だなあ」
とのこと。

 受賞作「化身」が予想していた以上にすばらしい。進化論を自分の
肉体で、文字通り体現した(但し退化方向で)ロビンソン・クルーソー譚、
と言おうか。

 会社勤めがいやになって有休で南の島に来た若い男が、着く早々、
密林の中の池に落ち、以来数年(?)、水中生活に適した肉体に進化し、
生延びる。偶然の水中の竜巻により陸地に戻り、肉体もまた陸上生活に
適合した状態に復元するが、ロビンソン・クルーソーみたように社会復帰
できるかどうか不明のまま、物語はぷつんと終る。

 地上に上る手がかり・足がかりのない池中で、ともかく毎日、生存し続ける
ことを仕事として生きるのだが、妙にクールで自分を突き放したような文体が
魅力だ。実存主義冒険小説、なんて言っちゃっていいものか。

 書き下ろしの「雷魚」は少年と幽霊の初恋話、もう1篇「幸せという名の
インコ」は、サキの短篇をバブル経済前後の日本に置き換えたような物語。

 3篇どれも文体があって、安心して小説世界に入って行ける。読めてよかった。
     (角川書店 09初 帯 J)
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by byogakudo | 2009-11-05 14:19 | 読書ノート | Comments(0)


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