2009年 11月 24日

ジョン・ウィンダム「さなぎ」半分弱

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 写真は、月島の交番。

 相変わらないジョン・ウィンダム・タッチ。パルプ雑誌にでも載ったら
けばけばしい挿絵が伴うようなミュータントSFが、渋い落ち着き払った
文体で綴られてゆく。落ち着き過ぎてて、若い方には、どうだろう?
 もっとさっさと話が進まないのかと、じりじりさせるかもしれない。
わたしには大変心地いいけれど。

 核戦争後の地球と思しい設定で、生物は遺伝子情報が狂っているから
奇形が発生しやすい。それまでの文明の成果は跡形もなくなり、人々は
中世的キリスト教戒律にすがって生きている。

 あらゆる奇形(この中では「偏倚」と呼ばれる)は、悪魔により齎される
「つまずき」だから排除されなければならない。神の似姿たる人間や
正常な形をもつ動物のみが「純正さ」の保証である、という原理主義者の
父のもとに生まれた少年が主人公だが、彼はじつはテレパスである。

 他にも同じテレパシー能力をもつ子どもたちがいる。少年は原理主義に
否定的な元船乗りの叔父に外部の知識を求め、いつかここを出て、夢に
見た昔の世界__<引く馬もなしに車が走っていた。そして時には空に
何か浮かんでいた。キラキラ光る、魚の形をしたもので、それはたしかに
鳥ではなかった。>(p7)__、ある都市(まち)へ行こうとしているようだ。

 半分近く読んでも、事件といえば、仲良くなった「偏倚」の少女(足指が
6本ある)がそれを隠していたことで一家全員、逮捕される悲劇くらいで、
淡々と中世的村落での日々が描かれている。じわじわした語り口が、
本の中にいる醍醐味だけれど、いまの流行りではないだろうと思う。
 ノンストップ・アクションなんぞ、犬に喰われればいいのに。

     (HPB 66初)
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by byogakudo | 2009-11-24 13:27 | 読書ノート | Comments(0)


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