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表題作「笑う肉仮面」は力作。冒険大活劇の貴種流裏譚である。
旧家の跡継ぎをめぐる親戚の陰謀により、整形手術で永遠の笑い顔
(肉仮面!)を張付けられた少年が、屋敷を追放され、風太郎忍法帖に
登場する幻術師みたような老人に拾われる。
親のない盲目の美少女や、子牛ほどある狼とともに旅芸人として
成長し、ある日、うっすらと見覚えのある村にやってくる。
別れ別れになっていた兄と、屋敷に住む妹とが互いを見いだすきっかけが、
幼いころ一緒に歌っていた童謡__<海は荒海、むこうは佐渡よ、・・・>__
なのも哀切である。
同じフレーズや会話の繰り返し効果が、風太郎の大人向け小説によく
見られるが、ジュヴナイルにも用いられている。
肉仮面少年と盲目の美少女との会話が、二度目には、幻術師老人と
少女の間に交わされる。屋敷に戻った少年を慕い、寂しがる少女を不憫に
思って、老人が少年の声色で喋ってやるのだ。
(山田風太郎ミステリー傑作選9 笑う肉仮面<少年篇> 光文社文庫 02初 J)