2010年 04月 13日

(2)クリストファー・プリースト「逆転世界」もう少し

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~4月11日より続く

 素敵な本だなあ。以前Sが読んで、「これ、いいよ」と言ったときは
生憎SF気分じゃなかったのでパスしてしまったが、この二、三日の
状態にはぴったりだ。

 惑星・地球を模して作られた「地球都市」で育った主人公が、
都市を離れて、任務で外部の辺境地帯に旅する。民兵いうところの
「土人」部落の連中に気をつけろと忠告されるが、イギリス本国と
植民地との関係にパラレルな構造だと思っていたら、主人公自身も、
託児所で学んだ地球の歴史と似た構造であることに気がつく。
 SFだから、モームやグレアム・グリーン的展開にはならない。

 都市は北にある「最適線」に近づけば近づくほど安定するが、逃げ水の
ような指標である「最適線」に合致することは決してない。地面が絶えず
南へと地滑り的に動いているので、土台に巨大な車輪をつけた「地球都市」は
常に北への移動を余儀なくされる。

 南にある部落への旅のシーンで、時間が空間に換算される世界構造の
効果が発揮される。「過去へ下る」と表現されるが、南に行けば行くほど
知覚に歪みが生じる。主人公が連れて行く「土人」女たちは押しつぶされた
ように寸足らずに、横広がりの体型になり、地形もまた扁平になって行き、

< かつて山だったものは胸の下で固い突起に変わり、腹はかつてかなたの
 峡谷だったものの上にある。足は、以前に別の山の頂きだったがいまは
 ただ縮んでいく突起状のものに、なんとか足場を保とうともがいている。
  彼は世界の表に伏せっていた。かつては山岳地帯だったものに腹這う
 巨人・・・・・・>(p207)

 双曲線が立体化した「世界」。カッコいい。

4月14日に続く~
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by byogakudo | 2010-04-13 13:37 | 読書ノート | Comments(0)


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