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いちどきに大量の俳句や和歌・短歌を読んだのは、これが生まれて
初めてだろう。風雅の道に縁遠い古本屋だ。名前だけ知ってた正岡
子規や久保田万太郎(「火事息子」は読んだ)、吉井勇であるが、
なるほど素敵な作品が目につく。
今さら万太郎の俳句ってすごいなぞと言うのは、無知のお披露目で、
恥ずかしくないのか、あたし、と自責の念に駆られるけれど、シンプルな
言葉遣いで余情を残す技術は、すごいなあ。
だから小説になると、ちょっとべたつくのだろうか。
「隅田川の今昔」(鹿児島徳治 有峰書店 72初 J)によれば「墨水
十二夜」の主人公・鈴村墨水は、鈴木台水という実在の人物がモデル
である。
かつては落語家や芸人・幇間・芸者たちのパトロンだった旦那が
財産を使い果たし、三囲の基角堂の庵に逼塞しているという手紙が
作者に届くところから始まる。
いいなあ、蕩尽。蕩尽できるだけのお金持ちに生まれなくとも、
蕩尽センスがないアーティストは、どうも信用しかねる。
(吉井勇 北光書房 47初)