2010年 05月 02日
click to enlarge. 大谷崎以前の谷崎作品は、どれもお上品でなくって結構であるが、 同じようなテイストを吉井勇に感じた。俗っぽさを恐れない姿勢と いうか、文芸作品も、工芸品みたように精緻に書かれなければ、 作品として成立しないなぞとは考えていなさそうで、そこがいい。 プルーストに対するジャン・ロラン「フォカス氏」みたような ものかしら、ちょっと違うかな。 ダンディズムの訳語はやせ我慢であろう。下町の大店に生まれた 男の誇りが、けち臭くなく、きれいに遊ぼうとさせ、結果は没落が 待つだけであるが、主人公・墨水の他にも、元は旦那と呼ばれた 「御沈落」組が出てくる。 墨水は、自棄を起こしたあまりの無茶苦茶ぶりは描かれないが、 他の元旦那たちの姿を借りて、没落の様子が述べられる。 「墨水十二夜」に出てきた明石島蔵は、かつて与えた恩を担保に、 いつまでも小金をせびり取ろうとするような、手のつけ様のない やくざ振りだが、「続明石島蔵」のエンディング、金魚を質種に しようとして、一匹だけでは金魚も寂しかろうから二匹持って 行こうと哀れみの念が起こる辺り、そして、わざと履き間違えて 来た新しい下駄を履くシーンに続くのが、哀しくっていい。 (新月書房 47初)
by byogakudo
| 2010-05-02 13:25
| 読書ノート
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