猫額洞の日々

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2010年 07月 12日

鮎川哲也「黒い白鳥」2/3

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 写真は、7月3日付けに記した、雨が降り出してからのスナップ。
家紋入りの提灯を誂えるのだろう。写真奥の窓には、イラスト入りの
細長い提灯が見本として並んでいた。提灯のジャンル別名称って、
知らないなあ。

 冒頭が昭和30年代の銀座風景なので、鮎川哲也は、これにした。
 若くうつくしい有閑マダムと、女子大の後輩にあたる、モダーン型美人の
お嬢さんがふたりで、サン・モトヤマと思しきショーウィンドウを覗いている
シーンから始まる。 

 下山事件に近江絹糸騒動に新興宗教ブームが、事件の背景に自然に
溶かし込まれている、よくできた風俗小説としても読める。
 もっぱら、この方面で愉しんでいるが、ヘヴィな本格ミステリ・ファン
には、なれそうもない。

 両大師橋で血のにおいを嗅ぎつけた犬の名前がペス。むかしの犬は、
ペスかエスが多かったようだ。なぜだろう?

 <北満でオロチョンのシャーマン教を観察してきた引揚者が教祖>
(p53)と噂される神道系新興宗教は、沙満(しゃまん)教。<原始シャーマ
ニズムに近代的なヴェールをかぶせた>だけの代物らしいが、麻布竜土町に
数千坪の敷地の本部があり、拝殿は<東大寺の絵ハガキからヒントを得たと
言われている>(p89)壮大な建造物だ。
 新興宗教系施設は、今でも建築家の腕の見せどころになっているのが
多々見られる。事情は大して変っていない。

 そして、梅雨時の蒸し暑さの中、歩き回って聞き込みをした刑事たちが
捜査本部に戻ると、主任警部が、
< 接客用の冷やした麦湯をふたりの茶碗にそそぎながら>(p69)
留守中に届いた情報を告げる。
< 部長刑事は音をたてて麦湯をのんだ。冷えているばかりでなしに
 砂糖がきいている。元来あまり酒がのめないたちだから、外歩きを
 したあとののどには、ビールよりもはるかにうまかった。>(p70)
< 「[略]ところで、きみたちのほうはどうだった?」
  からになった茶碗に茶色の水をつぎながら、主任警部はふたりの
 顔をみた。>(p70)

 麦湯なの、麦茶じゃなくて! 東京小説らしくてすてき!




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by byogakudo | 2010-07-12 14:43 | 読書ノート | Comments(0)


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