2010年 07月 15日

鮎川哲也「黒いトランク」1/2

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 クロフツの「樽」は、わりと近年に読んだ筈である。けれども、たしか
大きな樽がドーヴァー海峡(?)をどんぶらこと、行ったり来たりする話
でしょ、程度の記憶なので、どんなに本格ミステリ向きでないかも
解ろうというものだ。もったいない。

 その「樽」を下敷きにしているくらいは解る、鮎川哲也「黒いトランク」
に苦戦している。大樽の替わりに大型衣装トランクが用いられ、中に
死体が入っていた、という発端だ。

 鬼貫警部も捜査に加わるが、最初、犯人と目された男はかつての
恋敵、トランクの元の持ち主も友人。私的なサークル内で、事件が
進行するのかしら?

 事件は1949年(昭和24年)12月10日に発覚したが、戦後風俗が
差し挟まれる。
 
 犯人と思われた男・近松千鶴夫は、モルヒネと塩酸ヘロインの密売者
らしい。
<近松のモルヒネは一リットル二十万円でながされるので普通の相場
 より一割やすく、取引はなかなか活溌におこなわれた模様であった。>
(p15)

 近松は行方をくらまし、兵庫県・別府(べふ)から妻に葉書を出す。
<[略]うすくかすれた消印は、兵庫 別府 24・12・7と判読できた。
 収集時刻が入ってないのは、当時の地方の小局ではまだ戦時中の
 やりかたを踏襲していたからである。>(p41)

     (角川文庫 76年6刷 J)




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by byogakudo | 2010-07-15 14:18 | 読書ノート | Comments(0)


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