猫額洞の日々

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2010年 07月 17日

鮎川哲也「黒いトランク」読了

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 今週の新着欄です。梅雨明けの陽射しのようにギンギンした
ラインナップを心がけてみました。(のつもり)。よろしく。
 新着欄


 まさかと思っていたけれど、そのまま、鬼貫警部の友人間での殺人
事件だった。論理展開を主眼とする本格ミステリだから、それでも
構わないのだろう。

 大型衣裳トランクのすり替えが、いつどこで、どのように成されたか
を大きな問題点として、仮説が繰返される。寝る前に読んでいたので、
夜毎、前夜に繰り広げられた説を忘れては、そこを読み直していた。

 普通はそこを愉しむのだろうが、場違い者なので、専ら1949年
風俗あれこれが面白かった。
 最初の容疑者は九州地方在住。バスに乗って当地の警官が捜査に
行くシーンでは、バスガールがいる(p25)。

 鬼貫警部の友人のひとりは、江東区福住町で鉄工場を経営している。
< 永代橋をわたったところでバスをおり、少し先で横道にまがった。
 このあたりは隅田川からひいた運河がたてよこにとおり、それに
 沿って倉庫会社の壁が、灰色の谷のように連っている。眠ったように
 しずかな倉庫街をぬけて、とあるかどを折れたときに、運河ごしに
 活気ある騒音とモーターのうなりがきこえてきた。>(p141)

 この友人の住まいは、渋谷区穩田一丁目にあり、甘党の鬼貫氏を
<リプトンの青函(ばこ)>(p175)や<オランダのファンホーテン>
(p260)でもてなしてくれる。
<当時はまだ国内航空が復活していなかったから>(p179)友人の
アリバイは成立した。

 電話の普及状態は、
< 「承知しました。市外電話ですから少々手間どるかもしれません
 が、なに一時間もあれば判るでしょう」>(p244)

 そういう時代背景のミステリ。
     (角川文庫 76年6版 J)




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by byogakudo | 2010-07-17 13:09 | 読書ノート | Comments(0)


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