猫額洞の日々

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2010年 08月 09日

ルイス・パジェット「ミュータント」半分強

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 のっけから__Keith Richards Please Please Me

 何か読めそうなSFはないかと買ってみた、ルイス・パジェット「ミュータント」
(HPB 68年3版)だが、まあまあというところ。

 核戦争で発生したハゲの(髪の毛だけでなく、眉も睫毛も全身の体毛がない)
テレパスたちが、普通の人類といかに共存し、彼らを導いて融和の共同体を
作り上げようとしたか、というような物語だろう。

 1945年から書き続けられた連作なので、敗戦国・日独への敵意が激しい。
 日本人は遺伝的に身体が小さいので、大柄な民族に引け目を感じ、それ故、
自分たちは神の直系で、他より優秀な民族だというプロパガンダをでっち上げた、
とか登場人物が語っている。(p39~40)

 核戦争後に国家が崩壊し、物々交換を基本とする小村落共同体がアメリカの
あちこちに存在している。テレパスたちは二派に分かれる。読心能力は人類に
対する脅威ではなく、共に生きて行こうとする穏やかで漸進的な一派と、テレパス
であることが自らの超越性を示し、人類を支配すべきと考える一派である。

 ヴォークト「スラン」みたようなミュータントSFだが、つい、アメリカの中絶論争に
頭が飛ぶ。

 「スラン」では新人類の存続維持のために、最初は近親相姦からであっても、
ミュータント新人類を生み育てて行こう、というエンディングだったような記憶が
あるが__確認していない。違ってたらごめんなさい__、「ミュータント」でも
新人類の繁殖(失礼!)はテーマのひとつであり、アメリカ建国史は、ともかく女に
子どもを産ませ、人口を増やすことが課題であり、それが現在の反中絶運動と
(もちろんキリスト教がらみで)連続している。
 ディックは「まだ人間じゃない」で、胎児と言えど生命であると主張し、女性から
抗議されていた。

 まあ、女が実際の人類の繁殖行為を担うように身体ができているので、仕方ない
かもしれない。わたしみたように生まなかった女は、反人類的であると非難されても
反論しちゃいけないかもしれないが、胎児の生きる権利を主張しながら、リモコン
爆撃で他国の、地上に出現している人類を殺してる人々に、胎児の権利って言われ
ると、調子のいいダブルスタンダードですよと、言いたくなる。




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by byogakudo | 2010-08-09 11:41 | 読書ノート | Comments(0)


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