猫額洞の日々

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2010年 08月 17日

殿山泰司「バカな役者め!!」あと1篇

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 写真は、人形町で。あの頃(6月半ば)は昼間、散歩できた。
 室内で冬の寒さ、夏の暑さにじっと堪えるのが、古本屋の仕事なの
だろうか。修行の一種と看做せなくもないが、不要不急の古本屋が
無駄な修行に励んでいる図、とも言える。

 「バカな役者め!!」は短編小説集。自在な語り口と、ひとことで
言ってしまうと誤解を招きそうだ。一見、思い出すままに書き流して
いるかのような表面を持つが、身体にビートがあるから、可能な技だ。
記憶や連想があちこちに飛んでも、流れがくっきりと見える。ビートと
骨格性のもたらす流れだ。

 表題作『バカな役者め!!』では、高円寺に取材に行く話から、戦前
1932年、16~17歳時の思い出が語られる。
 殿山泰司は東中野の中野中学校という、全国の不良少年が集まる中学に
少し在籍していた。

<高円寺の駅のベンチで駅員と並んでタバコを吸ったりした。あのころの
 駅員には不良少年みたいなのもいたんだ。タバコの先をもんで中身を少し
 捨ててモルヒネの粉末を入れてみんなで吸った。オトナへのはかない挑戦
 だったのだ。モルヒネをどこで誰が手に入れたのかな。おかしな時代。おれに
 とって始めての麻薬は吐き気がするだけであった。ウィリアム・バロウズの
 <ジャンキー>を読んだらモルヒネのあとは吐き気がすると書いてあったので、
 あのときのはやっぱり本物のモルヒネだったんだなとおれは安心した。今ごろ
 安心してどうなるんだバカ!!>(p35)

          (ちくま文庫 01初 帯 J)




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by byogakudo | 2010-08-17 14:04 | 読書ノート | Comments(0)


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