2010年 10月 01日

J・G・バラード「楽園への疾走」とシャーロット・アームストロング「毒薬の小壜」読了

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~09月30日より続く

 バラードは巧く書けてしまうことに苛立って、ノンフィクション風を試みた
のだろうか。歌唱力の素晴らしさを自認していても、ときには違う歌い方を
してみたくなるオペラ歌手みたいに? 
 完璧なフィクションを構築できるが、完璧故に壊さないと先に進めない、
ということかもしれない。

 環境保護過激派女史は狂気をつのらせ、アホウドリの聖地は、種付け用の
少年を除いて他の男たちを殺しまくる、レスボスの聖地に、更なる変貌を
遂げる。
 少年はなんとか救助されるが、最終章の大急ぎの謎解き解説部分は、
手際がいいとは、けして言えない。けれども、ともかくリアリスティックに、
愚直なまでにユートピアからディストピアへの道程を辿ってみせようとする
意志が感じ取れた。疲れたけれど嫌いじゃない。
     (創元SF文庫 09初 J)

 少し軽く読めるだろうとシャーロット・アームストロング「毒薬の小壜」を
選んでみたら、正解。地味な中年男が、彼より若いとはいえ30代の地味な女を
救おうと結婚し、結婚後のトラブルによって、じつはふたりとも愛し合っている
ことに気づくお話、という要約でいいのかな?
 彼の地味で堅実な背景を描く最初の1/5、その後のドタバタとの対比が
効果的だった。巧い。
     (ハヤカワ・ミステリ文庫 77初 J)





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by byogakudo | 2010-10-01 20:08 | 読書ノート | Comments(0)


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