2010年 10月 11日

永井荷風「すみだ川・新橋夜話 他一篇」読了

e0030187_14312275.jpg









click to enlarge



 「新橋夜話」に収められた『見果てぬ夢』より引用__

< 彼は盗賊や公金の費消者などをも法律や道徳が見るようには
 見ていない。「忠兵衛」を書いた近松、「鼠小僧」を書いた
 黙阿弥のように天下の罪人を物哀れにまた勇ましく美しく見ている。
 といって何も積極的に悪を鼓吹するのではない。唯だ悪徳が産んで
 くれる悲哀を喜ぶのだ。この点においてのみ彼は罪を罰し悪を憎む
 道徳の存在に感謝している。人生に厳格な道徳がなかったらその半面の
 悪徳、それに対する同情悲哀、パラドックスの興味というものは全然
 産(うま)れて来ないからで。彼が十年一日の如くに花柳界に出入する
 元気があったのも、つまり花柳界の不正暗黒の巷である事を熟知して
 いたからで。さればもし世間が放蕩者を以て忠臣孝子の如く賞美する
 ものであったなら、彼は邸宅を人手に渡してまでもその称讃の声を
 聞こうとはしなかったであろう。>(p283)

 カトリシズムと悪の関係だ。審美的だけれど。
     (岩波文庫 87初 J)





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2010-10-11 14:31 | 読書ノート | Comments(0)


<< シオドア・スタージョン「時間の...      永井荷風「すみだ川・新橋夜話 ... >>