2010年 10月 26日

矢野誠一「志ん生のいる風景」読了

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 『第6章 父と子』に惹かれた。長男・金原亭馬生との関係は、
エディプス物語と言えよう。

 落語家としての志ん生の偉大さは十二分に認めるが、家庭を守る
責任者としては全く失格している父親に対する、不遇な長男の屈託が、
よくよく理解できる。

 父は史実や実際よりも、嘘であっても落語としての面白さを採る。
息子は、それを解った上で、詩的真実よりも厳密さをやはり選んでしまう。
そこが哀しい。特に長男という立場にあれば、異なるパーソナリティを
打立てなければ、私が私であることを証明し辛い。次男になると気楽
であるが。

 今はほとんど皆、ひとりっこの長男あるいは長女ばかりだから、
こういう難しさは解りにくいかもしれないが、親が神のように公平な
眼差しで子どもたちを見つめるかといったら大間違いで、親もまた
弱点や欠点の多い人間なので、好きな子ども、あまりそうじゃない
子どもに分かれる。
 子どもを殺してしまう最近の若い親とは、また違う、近代の日本の
家族の問題でもある。
     (文春文庫 87初 J)





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by byogakudo | 2010-10-26 12:08 | 読書ノート | Comments(0)


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