猫額洞の日々

byogakudo.exblog.jp
ブログトップ
2010年 12月 07日

イーデン・フィルポッツ「狼男卿の秘密」1/3

e0030187_13425823.jpg









click to enlarge


 
 ドラキュラ叢書に入っているが、作者は怪談ではなく、ストレート・
ノヴェルとして書いたのではないかしら? そう考えた方が、やがて
人狼に変貌しそうな、ウルフ卿の周辺描写の多さが理解しやすい。

 芸術と魔術に惹かれる、繊細で醜貌のウルフ卿は、本来の性格には
合わなくとも、自分の出自に課せられた義務である荘園経営を、亡父に
倣って引き継ごうとする。引き継ぎに当っての税金の問題やら、農民たち
との接触が描かれ、経営実務を頼んだ学友は、ソヴィエト・ロシアでの
仕事を捨てて、やって来る。友情とお給料の良さでこちらを選ぶのだ。 
 純粋に怪談を書こうとするなら、ここらは端折って、短篇にするの
ではないだろうか。

 原作は1937年刊。フィルポッツは75歳! 悠揚迫らざる書きっぷり
である。自分が書き記す言葉に疑問を持たず、自分の思考の道具との
違和感に悩んだことがなさそうな小説を読むのは、救われるときがある。
 神経質じゃなくても繊細克明に書ける、おとなの作家だろうか。

     (国書刊行会 ドラキュラ叢書7 76初 帯 J)





..... Ads by Excite ........
 
[PR]

by byogakudo | 2010-12-07 13:43 | 読書ノート | Comments(0)


<< 敵二人      ジェイムズ・P・ホーガン「造物... >>