2011年 01月 10日

平松剛「光の教会 安藤忠雄の現場」読了

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 「磯崎新の『都庁』」を読んで、すっかり著者・平松剛氏のファンに
なったが、安藤忠雄は、あのヘアスタイルと声が苦手で(!)、作品を
実際に見るのはもちろん、写真でチェックすることさえしていない。

 偏見はいったん生まれると食わず嫌いを起し、修正がむずかしい。
しかしひょんな機会で一読。建築が利便性・経済性の追求だけで、
果たしていいものかという安藤忠雄の作家姿勢は、理解できた。
 だけど、エアコン無しに生きてゆけないヤワな人間が、簡単に、理念
だけ了解していいものかと、反省しつつであるが。

 建築ファンには、わたし同様、見るのは好きでも、建設現場をまったく
知らない人も多いだろう。そんな基礎知識を欠いたファンにも、よく理解
できる丁寧な現場の行程説明が、現場に携わった人々の紹介とともに、
記されてゆく(読んでいて、「ん、これって『七人の侍』?」と思う)。

 建築の依頼者、建築家とアトリエ助手、構造設計事務所、工務店、
職人たち、各人の半生と考え方が描かれると同時に、プランから実行への
各作業過程に生じる問題点が時系列的に、わかりやすく説明される。
 コンクリート壁ひとつ取っても、こんなに面倒くさい、手数のかかる
作業を経てできあがるんだ! 無知は恐ろしい。

 コンクリートを流し込んで枠を外すとき、型枠に残る締付金物
(セパレータ)の痕を木痕(もっこん)と言うそうだが、その木痕を
デザインの重要な要素とする安藤忠雄事務所は、型枠パネルの釘痕も
木痕と同じく、整然と間隔を保って残るよう注意を払う。
 これを知ったおかげで、店に向かう道すがら見かける、建設途中の
プレハブのパネル壁が、コンクリートを模したプリント合板・木痕付き
だとわかった。コンクリート打放し文様・軽便版と言うべきか。
 安く上げるための工夫と笑ってすませるには、悲しすぎないか。

 愉しく読める、大人のための一般教養書として、最適の一冊だ。
 予算上、実行できなくてもいい。家を建てたい、一戸建てに住みたいと
思う人々が、頭の隅に、利便性だけではない居住空間という思想を住わせて
いるだけでも、意識は行動を変える。街がうつくしくなれるかもしれない、
ではないか。

     (建築資料研究社 06年6刷 帯)





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by byogakudo | 2011-01-10 13:27 | 読書ノート | Comments(0)


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