猫額洞の日々

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2011年 03月 30日

欠落こそ我れ

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 昨日、岡崎武志さんが訪ねて下さった。「女子の古本屋」文庫版
増補のために、ということだが、「女子」って、こちらは志賀直哉式に
いえば「バールフレンド」すなわちバーサンなのですが。いいのかしら。

 久しぶりでお目にかかったが、少し疲れていらっしゃるように
お見受けした。地震以来の疲労、停電による執筆時間調整などが
影響されているのでは? どうぞ、お体にお気をつけ下さい。

 夕方には古書伊呂波文庫さんと電話でしゃべる。彼もまた、あれ以来、
いつも通りに仕事をしているのに、なんだか違うと訴える。

 関東地方で地震に遭った人々は、東北の被災者に比べれば、ごくごく
軽微であっても、みんな、多かれ少なかれ、自分の中に、ある欠落感を
かかえてしまったのだと思う。

 あれを体験したことで、自身をかたち作ってきた時空間に埋めようの
ない欠落が生じ、空虚感はいつかは弱まるとはいえ、なくなりはしない。
 欠落が自分そのものであると認識するしかない。
 生きていること自体が、喪い続けることではあるけれど、大地震が
それを身体的に実感させた。欠落を我が身に認めよう。

 また岡崎氏の話題に戻れば、Sがミュージシャンであったことは納得
されても、わたしが「何もして来なかった」ことに不思議そうだった。
 やりたいことも成りたい大人像も何もなく、フーテンのまま生き延びたら、
そこには「古本屋」という職業がぽつんと残されてあった、というだけなの
ですが、やっぱり変かしら。

 世界とわたし自身、わたしの感情とわたし自身。どちらも遠いまま、
乖離感だけ実感して生きてきた。





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by byogakudo | 2011-03-30 13:39 | 雑録 | Comments(4)
Commented by scottmokey at 2011-03-30 23:49 x
初めまして。ブログ楽しみにさせていただいてます。文庫版の女子の古本屋に猫額洞さんが載るとは、絶対買わせていただきます。今日のブログにありました空虚感に関してですが、日本に住んでなくあの地震を経験していない私が言うのもなんですが(失礼でしたら謝ります)、何かが違うという感覚、欠落感に毎日惑わされています。もしかして、世界中の日本人に共通する感覚ではないでしょうか。でも猫額洞さんの言葉にうなずけました。自分を作ってきたまさに何かが欠如してしまったんですね。ありがとうございました。ブログ楽しみにしてます。
Commented by 鈴木博美 at 2011-03-31 16:34 x
「女子の古本屋」文庫版、楽しみです!
私は昨日、福岡から東京に戻ってまいりました。
福岡行きは、岡崎武志さんおすすめの作家、帚木蓬生氏の講演会にうかがうためです。横で申し訳ございませんが、scottmokeyさんと同じように、どこにいても「ここではないどか」感がありました。そして、たぶん思春期ごろからずっと解離(私の場合はこちらの「かいり」です、ハハッ!)に悩まされ続けております。‘ミクロのわたし’が身体の中で‘巨人のわたし’をもてあまして途方にくれているという感覚です。
Commented by byogakudo at 2011-03-31 17:20
お便り、どうもありがとうございます。世界中の原発がある国に生きる人々は全員、原子力がほんとに人間の手でコントロールできるものかと、立ち止まって考え直し、改めてショックを感じているのではないでしょうか。
世界の見え方が否応無しに変わってしまったのだと思います。
Commented by byogakudo at 2011-03-31 17:37
鈴木 さま: 離人症は20世紀から持ち越された病い(病いの定義にも因りますが)みたいに思えます。あるいは人と言語との関係で、どうしても起きてしまうことでしょうか。


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