猫額洞の日々

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2011年 05月 03日

本田靖春「警察(サツ)回り」読了

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 読売新聞社会部記者だった本田靖春が、上野署近くのトリスバー
「素蛾」のマダムや、バーに集った記者たちとの交流で綴る戦後史
(昭和三十年代史)。

 社会部が新聞社のスターダムを占めていた、戦後のごく短い時期。
昭和30年代初期、ナイーヴと今ではひとことで言ってしまわれそうな、
戦後民主主義の短くもうつくしく燃えた日々の回想である。

 今や一大権力、諸悪の根源のひとつと見なされる記者クラブであるが、
本田靖春が昭和33年に上野署に出入りするようになった頃は、署内に
間借りしているような有り様だった。

< 私たちは刑事部屋に食い込むための努力はしたが、権力機構である
 警察そのものとは一線を画していた。意識として、はっきり民衆の側に
 いた。社会部記者というのはそういうものだと信じていた。いまも私は
 その気分が脱けない。
  廊下を仕切った上野署の記者クラブは、時代の象徴である。署への
 出入りの動きが居ながらにしてすべてつかめるのだから、警察から
 情報を取るばかりでなく、警察に対するチェック機能も果たさなければ
 ならない警察(サツ)回りにとって、これ以上望ましい場所はないでは
 ないか。
  昭和三十年代後半から四十年代にかけて、警察署が次々に建て替え
 られ、新しい庁舎ができると記者クラブは独立した部屋を与えられる
 代わりに、奥まった場所や二階へと追いやられた。それと軌を一にして
 発表制度が徹底する。
  朝、次長が前夜来の事件や事故のメモを読み上げ始めると。コピーに
 してよこせ、と警察(サツ)回りが注文をつけた。そういう信じられない
 ような話を耳にしたとき、私はまだ読売にいた。>(p123~124)

     (ちくま文庫 08初)






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by byogakudo | 2011-05-03 13:21 | 読書ノート | Comments(0)


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