2011年 06月 28日

フィリップ・K・ディック「フロリクス8から来た友人」読了

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 昨日は失礼しました。

 見覚えがあるような、ないようなまま「フロリクス8から来た友人」
(フィリップ・K・ディック 創元SF文庫 92初 J)を読み終え、最後に
来て、やっと未読だったと確信。(遅すぎる!)

 構造はスペースオペラだが、なにせディックなので、中年男の悲恋が
つきまとう。

 地球ではミュータントの「新人」やテレパスの「異人」が、他の
60億の人類を「旧人」と見なして支配している。知的であっても
「旧人」にはブルーワークしか与えられない。

 「旧人」の唯一の希望は、外宇宙に救いを求めて旅立った「異人」
(だったかしら?)の反体制派が、外部の知的生命体(救援隊)を
連れて、体制打破の戦いに戻って来ることだ。
 主人公・ニック(もちろん、奥さんと上手く行ってない、さえない
中年男!)は、ふとしたことから反政府運動に加わり、そこで彼の
(ディックの)ファムファタールに出遭う。

<小柄で黒髪の美少女が立っていた。美人だが、どこか風変わりで、
 タフな感じがする。ししっ鼻、男心をそそる唇、エレガントな頬骨。
 女だけが持つ魔術的なオーラを発散している。ニックはそのオーラに
 直撃された。この娘のほほえみは、周囲を明るくする、とニックは
 思った。その笑みが顔全体を輝かせ、生命の光を与えている。>
(p76-72)
 はいはい、そうですか。それは悲恋に決まってる。

 彼女には、若い、町場のディオニソス的ボーイフレンド・デニーが
いるが、終り近くで、原作あるいは翻訳に、名前の混乱が起きている。

 警察から逃げようと空陸両用機を飛ばす彼女が、同乗の中年男・
ニックに向かって、
< 「回避操縦をやるわ。ニックがそう呼んでたの。螺旋飛行とか 
 インメルマン回転とかをたっぷり。ほんと、心臓が縮むわよ」>
(p354)
 ボーイフレンド・デニーはすでに警察に殺されているし、同乗者は
中年のニックなのだから、ここはニックではなく「デニーがそう呼んで
たの」だろう。

 また、愛機「セイウチ」が撃ち落とされそうになったとき、彼女は
<「[略]<セイウチ>を撃ち落とさせるもんか。デニー、約束するわ」>
(p367)と言う。この場合は、亡きデニーの名前であっても構わないが、
一緒に殺されそうなニックの名を呼ぶ方が、合っていないかしら。

 物語にはなんの支障も来さない、重箱の隅の話で申訳ない。





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by byogakudo | 2011-06-28 14:34 | 読書ノート | Comments(0)


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