猫額洞の日々

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2011年 07月 01日

ドロシイ・セイヤーズ「毒」読了/鈴木創士氏のコラム

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 鈴木創士氏の現代思潮新社webコラム、今月は、「第16回 ルネッサンスを
めぐる若干の覚書(一)」
です。


 ドロシイ・セイヤーズ「毒」(HPB 55初)は、
< 判事の机の上には深紅のバラがあつた。それは血のしみのように
 見えた。>(p7)と始まる。

 先だって読んだ「判事への花束」(マージョリイ・アリンガム HPB
56初)の裁判シーン、主任判事の描写では、

< 手には儀式的に花束を持つていた。廷内の空気が現代のそれ
 ほど衛生的ではなく、一束の草花が、潔癖な紳士と疫病の間の、
 せめてもの障壁であつた時代の遺物である。
  ややあつて、彼は突然にその花束を思い出したらしく、のり出して
 机の上の水のコップにそつとさした。チュードル王朝の壁掛けの意匠か、
 『不思議の国のアリス』の章の終りのカットみたいなかつこうで、その日
 一日ずつとあとまで活けっ放しになつていた。>(p191上下段)と、ある。

 「毒」(原題はSTRONG POISON)の原作は1930年刊行、「判事への
花束」(原題、FLOWERS FOR THE JUDGE)原作は1936年刊行。
 少なくとも1930年代のイギリスの法廷では、裁判官席に花があった
ということだろう。今でもあるのかしら?

 「毒」はブルームズベリー・グループ(内)殺人事件とも言えるミステリ
だが、「判事への花束」と作りに似た点がある。
 どちらも貴族や紳士階級のアマチュア名探偵が活躍し、名探偵の従者は
元犯罪者か下層階級、警察とも仲がいいが、警察の助力を憚る行為には
アンダーグラウンドの知り合いを頼ることなどが、よく似ている。流行りの
設定だったのか。
 また、被告が証拠不十分で無罪を勝ち取るのではなく、次の裁判で
真犯人が特定され、潔白が証明される点も同じだ。

 「毒」の二度目の裁判では、
<裁判官席には黄金色の菊があつた。花は燃えさかる旗幟のようで
 あつた。>(p245上段)が、「判事への花束」では、
<一同起立のうちに、裁判長が花束を手に厳然として退場して行つた。>
(p232下段)とある。
 
 「毒」の名探偵、ピーター・ウィムゼイ卿が以前の女友だち・マージョリーに
案内され、ボヘミアン酒場へ捜査に赴く場面では、

<誰かがハンガリヤの歌をはじめ、ストーヴはますます白熱してきた。
 隅の方の男ばかりのグループに交じつていたマージョリーに、彼は
 やりきれないというような合図をして見せた。面白そうなその連中の
 歓声に合わせて、一人の男が彼女の耳許に口をよせて自作の詩でも
 読んでいるらしく、また一人の男は封筒の裏に何かスケッチしていた。>
(p90下段)__ここでも封筒に書いて(描いて)いる。

 [7月2日追記:暑さボケしていて、アリンガムの名探偵、アルバート・
キャムピオン氏も貴族だと勘違いしていましたので、訂正しました。]
 [7月6日追記:もう一ヶ所ミスがあったので訂正しました。どこだかは
書きません。]





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by byogakudo | 2011-07-01 11:18 | 読書ノート | Comments(0)


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