猫額洞の日々

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2011年 07月 03日

ナイオ・マーシュ「ヴァルカン劇場の夜」もう少し

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 演劇のことは何も知らなくても、演劇関係者が書いたミステリなのは
よく解る。実感的だ。

 英国での原作刊行時のタイトル・Opening Nightが米国版では
Night of Vulcanとされ、日本語訳は米国版にならっている。
いま翻訳されたら英国版のほうを取って、「オープニング・ナイト」
と(近頃のアメリカ映画の原音タイトル主義みたいに)題されそうだが
1957年の翻訳当時だと、米国版訳のほうがミステリのタイトルらしく
感じられたのかもしれない。

 内容は「ヴァルカン劇場のオープニング・ナイト」そのもの。
初日が終り、カーテンコールのときに出演者がひとり、出て来ない。
 彼は楽屋で自殺と思しい状況で発見されるが、この劇場では以前にも
同じようなガス事故を装った、一見自殺、じつは殺人事件が起きている。

 ロンドンの演劇集団に飛び込んで来た、ニュージーランド出身の
若い女優を中心に描かれる演劇ミステリ。役者それぞれのステージ
フライトや、その克服法、普段でもつい演技的にふるまってしまう
役者の習性など、生き生きと伝わって来る。
 
 映画が好きで演劇は苦手(目の前で、生きた人間が動いている状況を
抽象化するのに時間がかかるので)な奴でも面白がれるのは、いい
ミステリだからだろう。





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by byogakudo | 2011-07-03 13:12 | 読書ノート | Comments(0)


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