猫額洞の日々

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2012年 03月 10日

シャーロット・ジェイ「死の月」読了

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 今週の新着欄です、よろしく。
 新着欄 

 とても丁寧に書かれたハーレクィン・ロマンス、と言ったら
失礼だ。まあ、ヴィクトリア・ホルトもロマンス・シリーズに
入れられたりするが。
 女性が主人公の教養小説とも言える。

 文化人類学者である年上の夫の自殺の真相を探りに、若い
未亡人はジャングルの奥地、オーストラリア政府の支配も及ば
ない辺境の地へ赴く。

 ヒロインの夫だけでなく、白人の男たちは全員、植民地である
熱帯の風土や原住民(翻訳では「土人」と表記される)との文化的
差異に苦しむが、女は強い。
 違和感を覚えつつも、目の前の現実を受け入れ、異文化を異文化と
して少しずつ理解していく。その過程で、父親や夫の見解を自分の
コードと看做してきた彼女は、彼らの生き方・信条から分離し、自立
した存在になる。

 原住民の信じる呪術や、自然そのものであるジャングルに足を踏み入れた
ときの恐怖など、細心に描かれている。熱帯に、言わばヤラレた男たちの
恐怖心や敗北感もよく伝わってくる。けして急がない筆致がいい。

 女性版・教養小説ではあるが、彼女が異邦の地の、異文化の試練を
克服し生まれ変われたのは、女である彼女が、経済的な問題に直面
せずに来たからではないか、という疑問も出てくる。(父の遺産でも
あったのだろうか。植民地の役所の事務職の給料だけで、この先、
やって行けるのかな?)

 男たちはみんな、内面では異文化との葛藤に苦しみながらも、日々
あくせく稼いでいる。ヒロインの夫の自殺にも、お金の問題が影響して
いる。
 彼女が、ほぼ無傷で霊的に再生できたのは、社会性・経済性の問題
から離れていられる女であるから、という一面が気にかかる。

     (HPB 1955年)





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by byogakudo | 2012-03-10 13:51 | 読書ノート | Comments(0)


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