2012年 03月 28日
click to enlarge そうそうフーコー浸りもしていられない(なぜさ? 他にやることが ある訳じゃなし。)、獅子文六「バナナ」も夜の読書に加わる。 獅子文六・大仏次郎・岸田国士が、ときどき読みたくなる日本語 作家トリオだ。おや、仏文系トリオか。 時代は戦後の混乱もやや落ちついた頃である。戦前は台湾系日本人 だった呉天童は台湾人になり、日本人の奥さん・紀伊子との間に息子・ 龍馬がいる。彼と息子に日本国籍はない。 戦前は台湾で商社を経営していた父親のすねをかじり、生涯に一度、 戦後の東京で土地売買をして稼いだだけの呉天童である。 商社の跡継ぎを神戸の弟・呉天源に譲り、それを多とする弟の仕送りで、 呉天童一家は、赤坂台町に豊かなブルジョア家庭を営んでいる。 なまけものの大学生・呉龍馬がひょんなことからバナナ輸入業に手を 染める。横浜に住むガールフレンドの父親が青果仲買人だったので。 そしてトラブルが起きるのだが、高度経済成長期へ向かう時期の風俗 小説として、あれこれと趣向がこらしてある。 今では想像もできないであろう、戦後のシャンソン・ブームや、競輪の 盛んさ(これは今も?)加減、銀座のバーの繁栄振り、そして特筆すべきは 食べ物小説であることだ。 呉天童は東京が世界中の料理が食べられる場所なので、日本に居着いた ような男である。彼が食べる中華料理、紀伊子が奥様連とお喋りする懐石 料理、その他の食べ物ほとんどがメニュー解説付き、という親切さだ。 登場人物たちの住まいの描写も細かく、国籍や混血児の問題(アイデン ティティの問題)も加味された、大人のためのエンタテインメントだ。 (角川文庫 53年3版 J)
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by byogakudo
| 2012-03-28 13:44
| 読書ノート
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