猫額洞の日々

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2012年 06月 19日

サラ・コードウェル「セイレーンは死の歌をうたう」読了

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 わたしのために書かれ翻訳されたんじゃないかしら?! すばらしい
ばかばかしさと古典の裏打ちだ。

 テイマー教授と若手弁護士たちの中で、おさわがせ役を担当するのは
ジュリア・ラーウッドだが、今回はオクスフォード出身者ばかりの仲間内で、
ただひとりのケンブリッジ出身者、マイケル・カントリップが大活躍する。

 カントリップはケンブリッジなので語法がヘンだと、からかわれているが、
オクスフォードとケンブリッジの校風のちがいらしいけれど、あいにく、両校の
卒業者を知らないので、よくわからない。

 そのカントリップとラーウッドが組んで、法廷弁護士の実体験に基づいた小説
『大法官庁(チャンスリー)!』を共同執筆するのが始まりである。

 ベストセラー狙いらしく、ヒーロー(カントリップに基づく)もヒロイン
(ラーウッドに基づく)も、それぞれスーパー・ヒーロー、スーパー・ヒロイン、
ストーリー展開は、007+ハーレクインかシルエット・ロマンスもどきである。

 カントリップ担当部分の文体のひどさ(主人公を形容するのに、やたらと
「スマート」が用いられる)からして、すばらしいが、ロマンス熱は波及する
ようだ。
 ラーウッドがケイマン諸島に出張したときの思い出話に口を挟む、いつも
冷静なセリーナ・ジャーディンの口調が、もろ、ハーレクインないしシルエット・
ロマンスの語り口になる辺り、しみじみ、このミステリが好きだ!

 テイマー教授シリーズは、教授による語りとラーウッドからの手書きの手紙
とをつないで進行することが多いが、今回はカントリップが愛用する、当時
の文明の利器?テレックス(古風な弁護士事務所なので、1989年くらいに
なって、ようやく導入された模様)が使われる。
 会社勤め体験がないので、名のみ知るテレックスだ。web検索して初めて
その姿を知る。

 カントリップが冒険小説的大活躍を見せる抱腹絶倒のミステリだが、ハーレ
クイン・ロマンスやシルエット・ロマンスの基底には、昔ながらのロマンスが
存在しているのがやがてあらわになる、という二重構造である。

     (HPB 1991初 帯 VJ)





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by byogakudo | 2012-06-19 14:06 | 読書ノート | Comments(0)


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