2012年 07月 29日

獅子文六「てんやわんや」読了

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 「日本文學全集 41 獅子文六集」には「てんやわんや」と「娘と私」
とが収録されている。解説で河盛好蔵が書いているが、とてもいい
カップリングだ。

 「娘と私」を読んでいると、戦前・戦中・戦後の世相の移り変わりが、
作家の目を通して、まざまざと窺われる。

 あっ、このエピソードが小説になったのかと読者の好奇心を惹く、
たとえば戦後初めてバナナを口にしたときの話や、焼け出されて戦後、
住まいに困り、主婦の友社所有の<一口にいえば化物(ばけもの)屋敷>
(P482下段)に住んだことが「但馬太郎治伝」に出ていたな、とか、
面白い。

 「てんやわんや」は戦後、二番目の妻の里である四国に居を定めた
ときの見聞ノートを元にして、敗戦後の首都の混乱と田舎の落ちつき
とを比較対照させている。

 気弱なジャーナリストが戦後の混乱に疲れて、四国に逃げ出すのだが、
彼の逃走理由が、いまいち納得しきれず、入り難かった。
 療養先の湘南から東京に出てきて新橋駅前の闇市を見るシーンの手前、
車中風景の頁(p15~16)がなかったのが、入り辛さに影響したのか?
 それだけではないような気がする。
 東京(混乱真っただ中の新日本)と田園地帯や山村(古い日本)との
コントラストを描いているが、あんまり効果を上げていないように感じる
のだが。
 
     (日本文學全集 41 獅子文六集 1960年 裸本)





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by byogakudo | 2012-07-29 13:16 | 読書ノート | Comments(0)


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