猫額洞の日々

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2012年 09月 09日

コリン・デクスター「オックスフォード運河の殺人」読了

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(~09月06日の続き)

 滅びること、滅びようとしていること・ひと、滅びてしまったひと・
もの・できごと。衰亡はひとを落ちつかせ、世界を静かな明るさで
眺められるようになる。

 生まれて初めての大病で入院生活を送ったモース主任警部と、彼の
周辺は、そんな落ちついた明るさで描かれる。

 病院でモースの隣にいた長患いの老人が死亡する。モースは彼の
未亡人から「オックスフォード運河の殺人」なる約100年前の殺人
事件史料集をもらう。
 つれづれに史料を読みながら、つい熱中して判決の誤りを指摘し、
真相(と思える物語)をつむぎ出す。

 退院したモース主任警部が、関係者の墓地や、かつての住まいを
訪ねてみると、墓地は壊されてフラットに生まれ変わり、古いタウン
ハウスは取り壊しの真っ最中である。大声では嘆かれないけれど、
風景が変わってゆくことへの悲哀と諦観が感じられる。
 病院の看護婦たちのクリスマス・パーティに招かれる、ちょっとした
幕間シーンもいい。

 生と死は地続きにあり、ゆるやかな境目しかありはしない。

     (HPB 1991初 帯)





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by byogakudo | 2012-09-09 15:37 | 読書ノート | Comments(0)


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