2012年 10月 25日

大竹伸朗「既にそこにあるもの」(文庫版)読了

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 単行本よりずっとヴォリュームを増してるのを知らなかったので、
文庫版は以前に売ってしまっていた。古書伊呂波文庫で見つけて買う。

 「現代美術」という、知的な作業や手続きが、作る側にも見る側にも
暗黙の裡に必要とされている(ように思える)制度・領域から必死で
身を振りほどこうとしているのが大竹伸朗なのだろう。ストイシズムが
身にしみる。

 『ワビサビ・トンネルドライブ』より引用する。

< 茶室の壁を僕が美しいと思うのは、雨もりの染みや壁の破損部分に
 対する対処の仕方に、トンネル内部の表面などに対する客観的な作業
 処置と同じような精神を見るからである。
 [中略]
 自分の中でのわびさび感覚は、本質的には芸術とは全く無関係の場所で、
 日常生活の中にひっそりと潜んでいるものであり、そこには何らかの
 ノイズが関係していると思えるのだ。茶室の壁の方がトンネルの内側
 より、そして美術館の壁に掛かる絵画の方が下塗り状態の看板より
 「偉い」と見てしまう意識にはこれからの芸術での可能性はない。
 今、世の中で「芸術」だと認定されているすべてのものを、もう一度
 自分の感知するトンネルの中にぶち込みそれらをトンネル内の壁と
 同等に眺めてみることはこれからも自分にとって「芸術」と「自分」
 の間合いを計る大事な基準となり続けるに違いない。>(p259)

 大竹伸朗って父性のひとだ。

     (ちくま文庫 2007年2刷 J) 





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by byogakudo | 2012-10-25 14:32 | 読書ノート | Comments(0)


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