猫額洞の日々

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2013年 01月 06日

ハドリー・チェイス「ミス・クォンの蓮華」読了

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 LEDの卓上灯はすごい。寝る前に接する光としては、神経を鎮めない
質の明かりなので避けた方がいいのだろうが、黄ばみというより茶色に
変色した古本に強いこと! 紙面がびっくりするくらいクリアに見える。
 これなら電子書籍のお世話にならなくてすむのではないか。(あとは
白内障の手術を受ければいい。)

 何十年ぶりのハドリー・チェイスだが、わりとよかった。情けないアメリカ男と、
彼とは対称的に誠実を貫こうとするヴェトナム娘とのコントラストが、そのまま
ヴェトナム戦争批判になりそうだ。

 原作発表の1960年というと、対アメリカではなく、北と南のヴェトナム間の
戦闘であるが、腐敗した南ヴェトナム政権や、おとなしくないアメリカ人や
中国人の様子が描かれている。(ああ、グレアム・グリーンが読みたい。選集か
全集を買うべきだろうか。そうすれば、いつでも思い立ったときに暗い気持ちに
浸っていられる。)

 タフで肉体的な圧迫感を周りの東洋人に与えているのに、根が気弱で
甘ったれたアメリカ男の存在は、もしアメリカという国家に自意識があるなら、
よく描かれた肖像画だとわかるだろうけれど、ヴェトナム以後のアメリカは
ヴェトナムの負け戦を忘れるために次々と戦争を続けてきたのだから、端から
何をいっても無駄だろう。

 ハドリー・チェイスがイギリス人だから書けた小説かもしれない。

     (創元推理文庫 1969初 J)





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by byogakudo | 2013-01-06 16:58 | 読書ノート | Comments(0)


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