2013年 01月 15日

クリスチアナ・ブランド「自宅にて急逝」/デュ・モーリア「鳥」読了

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 雪も苦手だ。雪かきをしなくっちゃと思ったけれど、昨日は心臓にくる
寒さだったので、悪いけれど止めた。ごめんなさい。

 クリスチアナ・ブランド「自宅にて急逝」は、どうも後味が悪い。
ブランド、好きなのに。

 戦後間もない1947年の原作刊行、時代設定は戦中(1944年)だ。
食料の配給や灯火管制が敷かれているが、それ以外はグッド・オールド・
デイズのままで、富豪の子孫たちは屋敷のプールで日光浴したり、川で
ボート遊びしたり、である。

 誰にとってのグッド・オールド・デイズだったかと言えば、上流階級に
とって、あるいは中流以上であろうか、兵隊に取られて人数が減った
使用人側からの悪意の放射シーンがしっかり描かれている。この場面の
後味が悪い訳ではない。

 吉田健一のエッセイで、夜会服の男と作業着の男がすれ違うとき、たんに
夜会服を汚しては気の毒だ、ということからか、すっと作業着側が道を譲る、
とかいう件りがあったと思うが(細かいニュアンスを忘れてしまった。確認
したくても、何のエッセイで読んだか忘れているし、まるきり読み違えて
いる可能性もあるのだけれど)、それぞれが自分の所属するクラスを肯定
して暮らしている、静かで落ち着いたイギリス人の在りようを述べた、と
思われる箇所に、そんなにうまくいくかなあと、半信半疑した記憶がある。
 下の側からは、いろいろ言いたいこともあるのではありませんか?

 上流階級のプライドもあって、困ったときには剛胆なジョークを飛ばし合って
切り抜ける一族だが、一家の中にしか殺人事件の犯人がいないことが明らかに
なったとき、ようやく、人間らしいといえば人間らしく、今まで言わずにいたお互い
への悪口が吐き出される。このシーンの後味が、どうも生な感触があって、いやだ
と思ったのだろう。それだけではないような気もするが。

 あー、もしかしたら、書かれている文章以上に、女のくそリアリズムを読み取って
しまう、わたしの過敏体質のせいかもしれない。
 前にも書いたけれど、幸田文「流れる」に、鉄錆と血の混じり合った経血臭を
嗅ぎとって具合が悪くなる奴なので。ついでに書いてしまえば、向田邦子を
賞賛する男の作家たちは、文章ではなく、彼女が扱っている時代に、郷愁と
自己愛を感じて反応しているのではないか。日本語小説としては、近代文学
修行みたような小説だったと思うけれど。
     (HPB 1959初)

 ダフネ・デュ・モーリア「鳥」に納められた『瞬間の破片』は、もうちょっとで
すばらしい怪奇小説になりそうなのに、どこかがうまく行かず、スリラー
あるいはサスペンス止まりになっている。

     (HPB 1963初)





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by byogakudo | 2013-01-15 14:52 | 読書ノート | Comments(0)


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