2013年 01月 23日

常盤新平さん

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 2001年6月に古本屋を始めて半年後、12月25日(火曜日)だった。
午後に文庫本や単行本を買ってくださった中年男性がその日の夕方と夜、
続けて来てくださり、住まいは遠いが親戚宅がこの近くで、とおっしゃる。

 それから又一年、2002年12月23日(月曜日)7pm頃に彼がいらした。
このときは、近所のご親戚の女性から聞いて常盤新平さんだと知っていた。
 その後数年、クリスマスが近づくと、またお会いできるかしらと楽しみに
お待ちするようになった。

 いろいろと思い出す。ある日、小林力氏が日経のコラムをコピーして持って
来てくださった。
 「これ、お宅のことだろう?」
 常盤新平さんのコラムには商店街名も何も書かれてないけれど、知ってる
ひとが読めば、うちだとわかる、すてきな文章だった。

 ある日、今はアメリカに住まわれるミズY・Sとお喋りしていたとき、入って
来られた。ガールズトークなぞものともせず、じっくりしっかり店内の本を
見て回られ、買ってくださる。お帰りになられてからミズY・Sに、
 「彼、常盤新平さんよ」と伝えると、「なるほど!」

 郵便局かどこかに行っていて立ち会えなかった残念な一幕もある。
 前に書いたかも知れないが、Sが店番していたとき、お師匠さんと
常盤さんとが同時にいらした。二人ともただ黙って本棚を巡り、探す。
 「僕がいちばん素人だったよ」と、後でSが言う、静かで濃い午後。

 白内障手術の後、眼帯姿で来てくださり、買って行かれた常盤さん。

 本を読むことが書くことになり、書くことが読むことになる循環の中で
生きていらした方のために、天国の一隅に本がいっぱい詰まった書斎が
あればいいのだけれど。

 70年代の愛読書、ホレス・マッコイ「彼らは廃馬を撃つ」の翻訳が
常盤新平さんだったと、ずいぶん経ってから気がついた。お礼を
申上げたかったけれど、もうクリスマスにもいらっしゃらなくなり、
ご親戚も引っ越されてしまった。

 ご冥福をお祈りします。





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by byogakudo | 2013-01-23 14:37 | 雑録 | Comments(4)
Commented by ulala at 2013-01-27 09:10 x
はじめまして、素敵な文章ですね。
ジブンにははかりしれぬことですが、人生って決して無駄ではなく、ちゃんといろんな人といろんな局面で巡りあっていて、それはある日急にまた蘇ってくるのですね。
常盤新平さんのご冥福お祈りいたします。ありがとうございます。
http://ulalaulala.jugem.jp/?eid=1431
Commented by byogakudo at 2013-01-29 12:46
こんにちは。
どうもありがとうございます。ページを拝見させていただきました。
常盤新平さんは本もお人柄もすてきな方ですね。目上の方に失礼な言い方になるかもしれませんが、チャーミング!
Commented by ジャック・リゴー at 2013-02-13 11:11 x
これこそ、映画ですね。
誰かが言ってたように、映画館の外で、映画のことを忘れているときの映画。素人、つまり観客は、そのつど、その映画を見ている人その人であって、次々と入れ替わるというわけですね。
Commented by byogakudo at 2013-02-13 22:04
<誰かが>ですか、ジャック・リゴーさま?!


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