2013年 01月 27日

ウインストン・グレアム「マーニイ」ほぼ読了

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 ネクロフィリアの傾向をもつ男、マーク・ラトランドは、社会的には
同族経営の印刷会社の重役だ。
 貧しさの中から這い上がってきた女、マー二イは、様々な名前と髪の
色をもつ泥棒である。しばらく会社に在籍しては、就職先から大金を
盗み逃亡する生活を3年も続けている。

 マークは考古学好きの最初の妻を亡くしている。家には彼女の残した
遺跡発掘物が、形見として相変わらず飾られている。

 彼はマーニイに惹かれた。彼女の自社からの盗みの後始末をしてやり、
結婚する。彼女がセックス恐怖症であることを結婚後に知り、分析医に
かかるよう勧める。
 彼は、彼女が冷感症タイプだから心惹かれたことに気づいていない
ようだ。マーニイは、前妻の遺品に取り巻かれていても嫉妬を感じない、
強烈なセックス嫌いである。

 冷感症とセックス恐怖症とでは、距離がある。マークはやはりマーニイ
からも愛を返してもらいたい。

 ネクロフィリアと冷感症とは、ある意味では理想的な結合であるが、
社会的には少数派だ。社会は多血質の欲望を中心に回転する。
 同じく重役であるマークの従兄弟のような、自己の欲望に会社を従わせ
たがる男たちの方がメインストリームであることは、いつでも変わらない。
 マークはどんな階級にあっても変わり者であろう。肌合いの違いに端を
発するふたりの重役の協同はむずかしい。

 映画「マー二イ」と原作が大きく異なるのは、階級間闘争の面である。
 マー二イは富者から盗むことは貧者の権利であるとも考える。富者である
マークは資本主義の前提を尊重するから、結婚後に知った、他の盗みを
できるだけ穏やかに解決できないかと努力する。

 トリスタンとイズーよりはボニーとクライドに近いマークとマーニイだが、
マークの無私の愛に縛られたマーニイは彼の愛に応える前に、社会への
借りを返そうと決意する。

     (HPB 1963初)





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by byogakudo | 2013-01-27 14:39 | 読書ノート | Comments(0)


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