猫額洞の日々

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2013年 02月 12日

ウインストン・グレアム「幕が下りてから」もう少し

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 「7」がキーワードの小説だ。ミステリというより、俗流フロイディズムに
則った、ややサスペンスがかった普通の小説だと思う。

 主人公の妻は彼より7歳年上、結婚して7年、やっと戯曲が成功し、
彼は若い女と恋に落ちる。
 七年目の浮気、というのもあったが、この場合、七つの大罪であろう。
彼の罪は何に該当するのだろう?

 原作発表当時(1965年)なら、主人公が妻を殺して、一時的には動揺
するけれど、あまり罪悪感を感じないことが読者にショックを与えた
かもしれない。
 いま読むと、彼の乖離感がわたしたちの日常だから、そんなに不思議
ではない。もし人を殺したらショックで悩むだろうが、同時に誰か別人に
起きたできごとだと感じかねない、そんな恐怖の方が強い。

 穏健なイギリス・ミドルクラス出身の主人公は、自分が殺人者である
ことが了解できず、幼なじみの牧師に訴えたり、仏教徒に相談を持ち
かけたりする。 殺人者であることを合理化するために、解釈を求める。

 彼は優しさと厳しさが混じった亡母の影響を強く受けている。母の代理
であるような、プロデューサー・タイプの女性と結婚し、彼女の支配力に
耐えかねて衝動的に殺してしまったのだが、自分が母親殺しをしたかった
ことに気づいていない。
 新しい恋人にしても、若いながら男を支配するタイプだ。
 いや、彼の何かが彼女たちの権力志向を刺激して、そうあらしめるのか? 
まあ、よくある、いつも同じ型の女に惹かれる男の物語、なのだが。

     (HPB 1970初)





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by byogakudo | 2013-02-12 20:04 | 読書ノート | Comments(0)


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