猫額洞の日々

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2013年 03月 20日

山田風太郎「妖説太閤記」上下巻読了

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(3月19日の続き)

 上巻のときから秀吉一代記の合間にちょくちょく、第二次大戦中の
日本軍の動きと比較したコメントが出てくる。
 本能寺の変での明智光秀が、織田信長を討取ったあと茫然として
次の一手に移らなかったことが、

<太平洋戦争に於ける真珠湾攻撃を彷彿せしめる。>(p362)と
評され、信長がもし本能寺で殺されなかったら、

<国家制度の近代化という点はもとより、のちに秀吉が失敗した
大陸進出も、若しも信長が生存していて彼の手で行われていたら、
或いは或る程度成功していた可能性がある。[中略]
 大陸や南方への進出を侵略というだけの見地からみる現在ただいまの
風潮からすれば論外の見方ではあるが、しかし現代ヨーロッパの驚くべき
豊穣な文明の基礎をなしたものは、彼らのアジアからの富の奪取にある
ことは歴史的な事実だから[以下略]>(p371)と述べる。

 それはそうなのだけれど、風太郎史観の鋭さにはほど遠い、我がヨタロー
史観に基づいて申さば、歴史が確定したあとでは、第二次大戦に関して、
イエロー・モンキーのやった蛮行という評価を覆すことは不可能だ。

 「妖説太閤記」の主人公、秀吉が「猿、猿」と嘲られたように、その子孫
たる黄色人種の日本人は、白人たちから黄色い猿呼ばわりされる。
 表立っては言われないが、深層ではどんなものだか。人種差別は意識では
抑制されても識域下まではコントロールできない。

 セックス・コンプレックスの豊臣秀吉の呪いが、明治以降の近代の日本にも
祟り続けたかのような読後感だ。
 成り上がるまでは必死だが、成り上がった途端、何をすればよいのか途方に
暮れ、やがて第二次大戦の悲惨、バブル経済破綻後の長い迷走、解決策には
例によって経済成長路線・土木国家再建しか思いつかない思考麻痺。
 まだまだ呪いは続きそうだ。

     (講談社文庫 1979年3刷 帯 J/1978初 帯 J)





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by byogakudo | 2013-03-20 14:21 | 読書ノート | Comments(0)


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