2013年 03月 21日

広瀬正「エロス」読了

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 正式タイトルは「エロス もう一つの過去」。目を走らせたら東京小説の
ようだし、冒頭に<この本を少年時代の自分におくる 著者>と献辞が
あるのに惹かれて読んでみる。

 歴史改変SFというのかしら。あのとき、ああしなくてこうしてたら、
今のこの生活ではなく、もう一つの生活史をもっていたかもしれない、
というストーリー構成だ。
 時代と自分の選択とが、いまの自分をつくってきたのだが、可能性と
しての過去の追求というテーマが面白い。タイムマシーン抜きで過去へ
行ける。

 そして追求される過去が、この小説では戦前、1930年代の東京である。
すぐに第二次大戦が始まる、つかの間の小春日和の東京と、1970年現在
の東京とが交錯しつつ語られ、エンディングでは・・・。

 東京の昔を事細かに描きながら、同時に科学技術史も詳しく語られる。
ラジオやレコードに電蓄、テレヴィジョンの開発研究、タクシーに使われる
自動車に国産車ができたことなど、知らないことだらけだが、作者のメカや
音楽に対する熱愛が感じられる。
 愛するものの固有名詞をすべて小説中に書き込んで、失われたときをもう
一度手にしようとする淡い哀切。
 作中には中学三年生の広瀬正少年まで登場する。いいじゃない。

     (河出書房新社 1971初 帯 J)





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by byogakudo | 2013-03-21 14:44 | 読書ノート | Comments(0)


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