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猫額洞の日々

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2013年 04月 13日

「山田風太郎妖異小説コレクション 地獄太夫 初期短篇集」読了

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 先週は失礼しました。今週の新着欄です、よろしく。
 新着欄 


 温度変化の激しい、こんな季節のせいなのか、本が読めない。
特に短篇小説が入りにくくって困る。長篇なら、入ってしまえば
小説の速度と読む速度とがいつの間にか一致して、ときには
読む速さの方が先走る、などということもあるけれど、こんなに
短篇が苦手になったのは、初めての経験だ。ミステリじゃない
ものを読みたがっているのかもしれない。

 うだうだと読んできた「山田風太郎妖異小説コレクション 地獄太夫
初期短篇集」だが、最後の『一、二、三!』が最高だ。

 彰義隊稗史の一種で、肥だめに落ちた(!)ことから妙に剣の
腕を上げ、ファナティックに官軍殺しと内ゲバをくり返す、文字通り、
糞真面目な男の話。

 本人は真剣・深刻に大義を奉じての殺人だけれど、土壇場に追いつめられた
ときでさえ、彼は肥だめに落ちる。あまりの臭さに仲間も、悪いけれど、別の
場所で切腹してくれないかと頼むほど。

 なんともいえない悲喜劇だ。第二次大戦末期の日本軍と日本人の愚かさを
自身の問題として、内部でとらえ直した山田風太郎ならではの怪傑作だ。
 戦争文学は、かくも相対化された。

 初出は「小説現代」昭和38(1963)年7月号。1970年代の浅間山荘
事件を予言したとも言えるが、ひとは決して歴史に学ばない、という
事実の言明かもしれない。

     (徳間文庫2003初 J)





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by byogakudo | 2013-04-13 14:31 | 読書ノート | Comments(0)


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