2013年 04月 21日

佐々木邦「いたづら小僧日記(改訂版)」読了

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 写真に見合ったこと書いてね、とSは言うけれど、いま水木しげるは
読んでないし、謡曲やお能は皆目知らないので、読み終えたばかりの
佐々木邦「いたづら小僧日記(改訂版)」感想文を書くしかない。

 メインの『いたずら小僧日記』は翻案ぽく感じられるが、てっきり
翻案だろうと思った露伴の創作探偵小説の例もあるし、わからない。
 幕末や明治生まれの作家たちの英語力はすごかっただろうと、毎度
思う。英語を聞いたり話したりする能力ではなく、読解力の点で。

 収められた短篇のひとつ、『修身教科書編纂(へんさん)者』の
主人公は郊外生活者だ。東京市内にある役所へ電車で通う。
 彼は年末賞与をためて、郊外に家を新築した。

 通勤姿は、古びたマントに色のさめた国産の帽子、東京は驟雨の
多い土地だから、いつもコウモリガサを携える。

< 郊外の畑の中も、駅からあまり遠いのは考えものである。押し売りや
 物もらいが来ないかわりに、商人に見放される。>(p169)

 コウモリガサの石突きがへって修理が必要になったが、代わりの傘も
骨が折れたままである。
< 「今度は駅からなお遠くなりましたせいか、コウモリガサ直しが
 いっぺんも参りませんのよ」>(p169)と奥さんが謝る。
 奥さんのも子どもの傘も修理が必要なので、彼は全員の傘を持って
電車に乗る。

< 郊外生活は、お殿さまにはできない。定期乗車券を所有する主人公の
 活躍を要する。家賃や地代の安いには訳がある。それを覚悟でみんな
 やっている。夕方役所や会社からうちへ帰る途中、
  「ぼくはここでちょっと降りる」
  と甲の紳士がいえば、
  「いや、質はこの次のほうがいいぞ」
  と、乙の紳士にもじゅうぶん意味が通じる。市場へよって牛肉を買う
 のである。>(p170)

 郊外生活というモダーンライフの歴史は長い。

     (春陽文庫 1969年24刷 J)





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by byogakudo | 2013-04-21 13:13 | 読書ノート | Comments(0)


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