2013年 05月 08日
食卓ではダニエル・ファーソン「フランシス・ベイコン 肉塊の孤独」 (リブロポート 1995初 帯)を読み、寝床では吉田健一「東京の昔」を 読んでいたら、Sが大丈夫か、という顔をする。 大丈夫。頭は自動的に切り替わる。ヘンタイかしら。 東京という空間を背景にした時間論だ。吉田健一の書くものは大体 時間論であり、比較文明論だが。 吉田健一は荷風の文明論を認めない。馬鹿にしている。 < 「[略]併し西園寺さんがパリでそんなことを考へてゐたんですかね、 自分は今異国にゐるなんていふことを。さういふことを始めたのは もつと後の、」とまで言つて古木君が永井荷風の愛讀者かも知れない ことに気が付いて先が續けられなくなつた。>(p56) 明治国家建設と立身出世とが同目的性を持っていた荷風の父親世代と、 二代目の荷風の対立関係を思えば、個人であることを必死で獲得しようと した第二世代に対して、吉田健一はいわば唐様で書く三代目だから、その分、 ゆとりがあるというだけの話ではないかと思いもする。 漱石についても吉田健一は否定的だ。 <併し實際に机に向つてでも何でもプルーストの小説の世界を一度もそれを、 或はその舞臺を見たことがなくて日本で築くといふのがどういふ性質の作業 なのか甚兵衛[注 作中の本郷のおでん屋]や資生堂を離れて考へて見れば 理解するのに手に餘るものがあつた。 [中略]漱石がその英文学論と稱したものがみじめなのは日本で英国のことは そつちのけで英国に就て勉強した結果の前には英国まで行つて見て来ることも 無力だつたことを示してゐる。古木君が漱石に、そして又荷風になる心配も なかつた。>(p148) 鴎外には肯定的だったと、たしか「書架記」で読んだような気がするが。 日本のモダーニスムが芽生えつつあった1930年代の東京を味わう本だ。 (中央公論社 1974初 函)
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by byogakudo
| 2013-05-08 15:38
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