2013年 05月 25日

嵯峨島昭「軽井沢夫人」読了

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 今週の新着欄です、よろしく。
 新着欄 

 外の棚に出そうと紙袋を覗いたら、適当そうな文庫本が
2冊ある。光文社文庫の嵯峨島昭「軽井沢夫人」と島田一男
「伊豆の踊り子殺人事件」だが、これらはお師匠さんか、もう
ひとりのミステリ・マニアの方か、どちらかから来た本だ。
 あのお二人が、ありふれたエンタテインメントに手を出すなんて、
そんなことが考えられるだろうか。何か訳がありそうだ。

 嵯峨島昭(さがしま・あきら)は「探しましょう」の意味で、宇能
鴻一郎のミステリ用ペンネームだそうだ。
 宇能鴻一郎、読んでない。じゃあ、読んでみよう。

 何でしょう。頭の悪い日本版ジュリアン・ソレルと、ひとがいい
だけのレナール夫人、何を考えてるのか解らない、たぶん感情を
思考と取り違えてるだけのマチルドが、1979年頃の軽井沢で交錯
する物語。
 ミステリ仕立てにせず、恋愛小説のまま進めた方が無理なく行けたん
じゃないかと思う。終盤の謎解きシーンがバタバタしている。「赤と黒」
路線に「太陽がいっぱい」が混じり込む。まあ、これは階級闘争の系譜
と言えなくもないが。

 いちばんの謎は、アラン・ドロンかジュリーかと女たちから騒がれる
美貌の主人公が、夏の軽井沢でアルバイトすることで上流階級と知り合い、
のし上がって行こうと決心したことだ。この前提を受け入れないと話が
進まないのだけれど、いくらなんでもなあ。

 貧しい出自の主人公の青春の鬱屈みたようなものは描かれているから、
その線で行けばよかったのに、とまだ思うが、エンタテインメントの要請、
やむを得なかったか。

2015年9月25日に追記あり

     (光文社文庫 1988初 J)





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by byogakudo | 2013-05-25 12:22 | 読書ノート | Comments(0)


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