猫額洞の日々

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2013年 06月 20日

梶山季之「狂った脂粉」読了

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~6月19日より続く

 「坊ちゃん」(読んでないけれど)風の高校教師がスカウトされる。
 アメリカの大手化粧品会社が日本に上陸するという。その前に現在の
化粧品業界を攪乱して進出余地を整備確保しようとする産業スパイ組織に、
高給で誘われる。

 化粧品の流通や販売にはさまざまな様態があるが、産業スパイ組織は
それらをつぶすのに手段の是非を問わない。悪辣なやり方で既存業界を
かき回す。
 正義漢風の主人公だったが、仕事自体の面白さにのめり込んで、
スパイ活動・破壊工作の歯車と化す。

 もちろん犠牲者が出る。自分たちのせいで家庭が崩壊したり、仕事を
失ったりした人々に対して、後味の悪さを覚えながらも活動を続けて行く
ところは、穿ちがきいている(と、ヨタロー読みした)。
 日本人が戦時中は国威発揚ムードに浸って熱狂し、戦後は経済復興・
経済成長の熱狂に巻きこまれて行くのと、同じ構図である。
 そんなことは梶山季之は意図していなかっただろうが(?)、いま
読むと図らずもそう読める。

 以前、書いたと思うけれど、ジャズ喫茶「木馬」に長年勤めていらした
お客さまが、昔、コマ劇場でジャズ・ライヴがあったと仰っていた。
 女性経理課長の引き抜きのシーンで、興信所の調査記録としてその話が
出てくる。

<  17時45分 二幸の手前、銀行脇から右に折れ、都電通りを横切って、
  コマ劇場へ行く。
   18時4分 待ち人らしき若い青年来たる。大学生風。姉弟か? 紺の背広に
  赤ネクタイ。背は五尺七寸ぐらい。髪は慎太郎刈り。茶の短靴。
   18時5分 談笑しつつ、コマ劇場にはいる。実演は<春のジャズフェスティ
  バル>、併映は東宝<のるかそるか>。急ぎ切符を求め追尾する。>(p109)

 小説の時代設定は昭和三十何年、梶山季之が「のるかそるか」を地方紙に
書いたのが1963年5月〜64年2月(単行本は1964年 文芸春秋新社)、東宝での
映画化が1963年なので__掲載中に映画化してしまうって、どういう経緯か
よくわからないが__たぶん、お客さまが言っていらした話と同時期であろう。

     (光文社文庫 1987初 帯 J)





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by byogakudo | 2013-06-20 14:52 | 読書ノート | Comments(0)


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