猫額洞の日々

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2013年 06月 26日

磯崎新 編著「建物が残った 近代建築の保存と転生」ほぼ読了

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 「銀座レトロギャラリーMUSEE」の若いオーナーは、大分で
代々、建設業を営む家系に属する。
 辰野金吾設計の「大分銀行赤レンガ館」は曾祖父、「宇佐神宮
宝物館」が祖父、「大分市美術館」を手がけた父は、磯崎新の
「大分県立大分図書館」の保存運動を指揮して、「大分市美術館
アートプラザ」として再生、そして現代表は、銀座の古いビルを
救った。
 「銀座レトロギャラリーMUSEE」見学に行く前に、一夜漬けだ
けれど、関連本として読んでおきたい。

 建築は建築家の作品であると同時に、実用に供されるモノだ。
メンテナンスが悪くて悲しい姿を晒したり、丁寧に維持されたと
しても、新たな設備の導入が難しかったり、耐震の問題などが
生じる。
 スクラップ&ビルドを奨励する税制の問題も、とても大きい。
詳しい税制を知る由もないが、じつはこれが、いちばんの問題
ではないか。
 銀行ローンと大手建設会社とがタッグを組む新建材住宅は
建てやすく、古いビルや住宅を手直しして使うことには冷たい
税制である。
 街並の保存、記憶の容れ物としての建築なぞという考え方は、
贅沢で無駄で感傷的だと言われているに等しい。

 建築を巡るそんな状況で、どうやって「大分県立大分図書館」が
「大分市美術館アートプラザ」に転生できたか。
 建物を残したいという意志が政治力と手をつなぎ、実現した。
(隣り合う「大分県医師会館」の保存にも、何か有効な手だては
ないだろうか。)

 読んでいてピンと来たのが、<パトロナージュの文化>だ。今なら
施行主である自治体と請負った建築事務所との近代的な(!)契約
関係になる県立図書館の建設だが、1960年代頃までは近世的と
言ってもよいだろう、旦那衆とアーティストとの関係が存在していて、
地元出身の若い建築家・磯崎新に話が持ち込まれた。
 そのパトロナージュ精神の遺産が、保存・転用が実現した、この場合
にも力を発揮したと思う。

 話が逸れるが、阿佐ヶ谷住宅の保存に手を挙げるIT長者はいない
ものかと嘆いたことがあるが、無理な相談だった。彼らの成長過程で
パトロナージュの空間に接する時期はなかっただろう。知らないものに
目覚めることはできない。

 アートや文化が、経済性を持たない不要なものと見做されてきた__
外国で評価され、換金できると解れば奉られるけれど__明治以来の
近現代日本だが、地方都市で生き延びたパトロナージュ文化、アートと
実業との結婚が東京でも有効であることを証明したのが、「銀座レトロ
ギャラリーMUSEE」であろう。

     (岩波書店 1998初 帯 J)





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by byogakudo | 2013-06-26 14:05 | 読書ノート | Comments(0)


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