猫額洞の日々

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2013年 08月 08日

ハワード・ブラウン「夜に消える」読了

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 これも暑い夏のミステリ。
 主人公は仕事中毒の広告代理店・重役だ。やっと夏休みを取り、
妻とひとり娘と三人で過ごした湖畔の別荘から、蒸し暑い夏の晩に
戻ってくる。明日からすぐに仕事である。
 妻は先に家に入り、続いて男は、眠り込んでいる娘を抱きかかえ、
二階の部屋に寝かす。
 シャワーを浴び、彼も寝ようとするが、妻が来ない。家中を探しても
いない。バッグが居間に残されている。
 神隠し?!

 警察が本気になって探してくれないものだから、主人公はとんでも
なく超人的な妻探しの活劇を始める。あれよあれよ、という展開だ。

 一夜明けた午前中には手強いクライアントに、逆に押しかぶせるような
アイディアを示して交渉成立、午後には、消えた妻の情報を求める広告を
全メディア(新聞・ラジオ・TV)に打つ。
 ブレーンストーミングの要領で広告会社の有能なるスタッフに協力を
仰ぎ__いくら社長候補とはいえ、いくらアメリカ人にとって家族が大事
とはいえ、呆気にとられる。__結局、警察機構に代わって事件を解決
する。

 広告代理店の優秀さを示す例として、市場調査部スタッフのエピソードが
出てくる。

 関係者らしき男の写真が手に入り、隅っこにどこかの店のショーウィンドーが
写っている。ガラスにERYの文字と日除けの折り目に七七三の数字が見えるだけ
だが、そこから分類法の索引・逆索引作りで鍛えた類推が始まる。

< 「[略]確率だけからいくと、まず食料品店ということになります。そこで、
 職業別電話帳で、まずマンハッタンから、食料品店のうち、番地が七七三で
 おわるものをさがします。あったとしても、せいぜいひとつでしょう。ひとつ
 あれば、それがこの写真の店です」
  「なければ?」私はたずねた。
  「なければ、おなじマンハッタンの、こんどは文房具店をあたります。それで
 だめなら、パン屋、婦人装身具店です。ぜんぶあたってなおだめなら、つぎは
 ブロンクスとブルックリン地区をおなじ要領であたります」
  「何時間だ!」私はうめいた。 
  「いいえ、こうして五人いるんですよコーエルさん。わるくしても、一時間とは
 かかりませんよ」>(p128上下段)

 広告代理店が時代の花形だった頃のミステリである。働き者のアメリカ人は
実質、スーパーマンだと言いたかったのかしら。ジェットコースター的スピードに
呆れながら読んだ。

     (HPB 1965初 VJ無)





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by byogakudo | 2013-08-08 13:41 | 読書ノート | Comments(0)


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