2013年 08月 15日

M・アリンガム「幽霊の死」読了

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 本格ミステリは、探偵がいるのに関わらず(いや、いるからかも)
殺人事件が起き、最終章で慌ただしい説明が行われる。
 読み飛ばしていた箇所に伏線があったと知らされ、地味な扱いを
されてきた人物が犯人、というのが大体のパターンだ。倒叙法で
書かれていても、最終章に向けて絞られてゆく。

 「幽霊の死」はむしろストレート・ノヴェルに近い書き方だ。
2/3を過ぎた辺りで犯人が指摘され、しかも地味などころか
ケレン味たっぷりの犯人である。残り1/3を費やして、犯罪の
証拠を残さない犯人をどうやって捕えるか、これ以上の殺人を
防げるか(防いじゃう!)が描かれる。

 1930年代の英国である。1912年に亡くなったジョン・セバス
ティアン・ラフカディオなる著名なイギリスの画家は、死後十年
経ったら、毎年一作ずつ遺作を公開するよう遺言する。
 まるで画家がまだ生きているかのように社交界の人々が集まる
レセプション当日、殺人事件が起き、遺族の友人でもある名探偵
アルバート・キャンピオンは、事件の捜査に関わる。

 70歳の未亡人はかつてジョン・セバスティアンの絵のモデルで
あり、孫娘は画家、同居する心霊術マニアの老女は彼のミューズ
だった(とされる)、他にもジョン・セバスティアンに関わった
人々が家族同様に暮している。

 絵描きと批評家や画廊との関係など、楽しく読めるミステリだ。
J・S・ラフカディオはホイッスラーの友人であり、サージェントに
より描かれた肖像画(たしかサージェントだったと思うが、付箋を
なくしてチェックできない)が部屋にかけられている、とか。
 死せるジョン・セバスティアン・ラフカディオ、生者を騒がす。

     (HPB 1956年3版)





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by byogakudo | 2013-08-15 13:36 | 読書ノート | Comments(0)


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