2013年 09月 01日

レックス・スタウト「赤い箱」読了

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 先日見つけられなかったレックス・スタウト「赤い箱」を無事
発見して読む。

 ニューヨークのファッション関係者が次々に毒殺される。有名
デザイナーのメゾンでモデルが、デザイナー本人がこともあろうに
名探偵ネロ・ウルフ宅で、デザイナーの昔なじみは自分の車の中で。
 断じて自宅を離れないネロ・ウルフが、しぶしぶメゾンに出向いた
挙句の連続殺人事件だ。思考のひとネロ・ウルフは、行動のひと
アーチー・グッドウィンに、容疑者たちを観察するよう指示を出す。

 容疑者宅に向うアーチーが自己分析する。
< 厳密にいえば、こんなことはぼくの仕事じゃなかったんだ。
 [中略]
 ぼくは微妙な感じをつかむのに敏感だとはいえない。本来ぼくは
 直接型で、それだからどうしても本当の名探偵にはなれないんだ。
 仕事の邪魔になるといけないからできるだけ抑えてはいるが、殺人
 事件なら、疑わしそうな奴に一人一人全部ぶつかって、そいつの
 眼を見て、「アスピリンの瓶にあの毒薬をいれたのはお前だろう?」と
 聞いて、そのうちの一人が、「そうだ」というまでただそれを続ける、
 これを何時もやりたくなるんだ。抑えているとはいったが、それには
 努力を要するんだ。>
(p155下段〜p156上段)

 彼は観察することはできる。細かい表情変化を見てとり、交わされた
会話を記憶し、自己流速記で書き留める。ネロ・ウルフのためにパズルの
ピースを採集することは得意だけれど、直感的に全体像を見通すのは
苦手だ。ネロ・ウルフの想像力を発揮させ実現させる技術面を受け持つ
のがアーチー。シャーロック・ホームズを二分割した二人一役だ。

 前に、ネロ・ウルフ・シリーズにブラウン神父ものみたような感じを
受けると書いた。

 お抱え料理人フリッツが整えた夕食時に、ネロ・ウルフは読んでいる本
『智慧の七つの柱』の話をする。
<ローレンスがアラブの諸部族を結束させて大反乱を起こさせるのに
 成功した主な理由を、ぼくに懇切に説明してくれた。>
 その内容を記した段落の最後を、
<グーラッシュはフリッツの傑作だった。>(p173下段)と落とす。

 ここらの呼吸、ヒューマーに大人っぽい距離感を感じ、イギリス型の
ミステリを思い出したからだろうか。ヒューマーは距離意識の産物だ。

     (HPB 1959初 VJ無)





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by byogakudo | 2013-09-01 14:42 | 読書ノート | Comments(0)


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