猫額洞の日々

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2013年 09月 17日

エド・レイシイ「リングで殺せ」読了

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 かつてはシュガー・レイ・ロビンソンに挑んだこともあるボクサー、
アイリッシュ・トミー・コークはもう32歳。借金まみれで動きが
とれない。
 結婚しているが家はない。妻はウェイトレスで間借り生活、彼は
南京虫のたかる、窓もない部屋に住む。ろくにトレーニングできず、
試合前日に血を売ってパンを得るような生活では、新人にノック
アウトされても当然だ。
 貧困が貧困を循環させる。それでも彼は返り咲ける、自分には
アイルランドの幸運があると信じて、転職など考えない。
 そんなトミーを、若手ボクサーの相手役として契約したいと、自称、
拳闘好きの大金持ちが声をかける。トミーは大喜びで話に乗る。

 トミー贔屓のアナウンサーは裏がありそうだと心配して、元アマチュア
ボクサーだった刑事に相談する。トミーの契約には、彼の死亡時に五万
ドル支払われるとあるのだから、保険金詐欺の疑いが強い。

 物語自体はシンプルでも、各人の私生活が細かく挿入されるので、
小説として面白く読める。
 刑事の妻は業界誌の腕利き編集者だが、作家になり損なった女で、
同じくアーティスティックな写真家になりそびれた男と、浮気しよう
かしらと考えていたり、疲れ果てたトミーの妻は、ともかく家(house
でありhomeである)さえあれば、やり直せると盲目的に信じ込み、
もぐりの宝くじの売上げに手をつけてシンジケートに殴られたりする。

 ボクシングがTV中継で見られるようになり、各地の小さなボクシング・
クラブがつぶれ、ボクサーたちがあぶれた時代、1950年代末の物語だ。

     (HPB 1964初 VJ無)





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by byogakudo | 2013-09-17 15:10 | 読書ノート | Comments(0)


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