猫額洞の日々

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2013年 10月 02日

イアン・フレミング「007号は二度死ぬ」を読み終えたことにする

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 イアン・フレミング「007号は二度死ぬ」はスパイ・アクションではない。
英国のスパイ、ジェイムズ・ボンドと日本の公安調査局長官、タイガー田中
とが延々と東西の比較文明論を語り合い、今は失われた1960年代の日本、
東京や地方の風俗、街や村の様子が記述された小説である。

 終盤1/4を残して、リタイアしてしまった。後は走り読みとSから聞いた話
とで、読み終わったことにしよう。
 自殺教唆狂みたような犯罪者がボンドの妻を殺した男と同一人物だと知り、
鬱病気味で気勢の上がらなかったジェイムズ・ボンドもようやく暗殺の意欲を
燃やし、犯罪者が城を構える小島に行くんだろうな、というところまでは読んだ
のだが、これ以上読み進める気になれなくって。

 日本については調査が行き届いていて、最初の芸者をあげる宴会場面から、
「まくら芸者」と普通の芸者との違いが解説される。
 銀座のバーではサントリー・ウィスキーのホワイト・ラベルを推奨され、煙草は
「しんせい」がお勧め、車はトヨペット、他には、そうだ、タイガー田中は寅年で
ボンドは子年、というのもあった。
 島に住むキッシー鈴木の家の厠についても詳しい。

<九時になると、十三夜の月の下を父親がボンドを招いていっしょに家の
 裏手に出た。父親は、竪穴式で、きちんと四つ切りにした朝日新聞を壁の
 釘にかけてある小さな掘立小屋にボンドを案内した。これで、ボンドが秘かに
 抱いていた島の生活での最後の不安も消えたのだった。チラチラする蝋燭の光で、
 そこもうちのなかと同じく清潔で、少なくとも健康に害はなさそうだった。>
(p142下段)

 タイトルも内容も忘れてしまったアイリッシュの短篇で、日本、戦後すぐの
東京を舞台にしたものがあったが、明らかに日本に行かずに話だけ聞いて
書いたミステリだった。
 横須賀か横浜(?)から東京までの道のりは、たしかに焼け野原だから何も
ないと書くしかないけれど、実際に目にしてはいないのが翻訳からもはっきり
感じられ、そっと雨戸を開けるシーンは書割りめいた雨戸なので、それでは
開かないでしょと、つっこみたくなる。そんなところだけ覚えている。

 ついでにレナード・ニモイが「タケゾー」さんという日本人のお花の師匠(?)
に扮して暗殺を決行するTV版「ミッション・インポッシブル」すなわち「スパイ
大作戦」も思い出した。
 レナード・ニモイの着物姿がやたら裾短かで、惜しいと思った。前をはだけ
ないで静かに歩いていたけれど。

 なんの話だ。そう、外国を舞台に小説を書いたり映画を作ったりするのは
難しくて、「007号は二度死ぬ」は情報的には正確だが、スパイ小説として
読むべきではない、と言いたかったのか。

     (HPB 1965年10版 函傷み VJ無)

追記: いまWikipediaで見たら、レナード・ニモイは歌舞伎役者に扮した、
とある。お花の師匠と覚えていたのは、竹の花活けを下げて歩くシーンの
せいだろう。





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by byogakudo | 2013-10-02 12:33 | 読書ノート | Comments(0)


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